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お客様事例

2007年12月25日公開

バンドウイルカ フジの人工尾びれの開発

「フジをもう一度、仲間と一緒に泳がせてやりたい」


 
今回のCADmeister倶楽部ではユーザ事例といたしまして、株式会社ブリヂストン様の取り組みをご紹介いたします。
尾びれの一部を失ったイルカのために、世界で初めての人工尾びれ開発に挑戦されています。
本稿は2007年12月に開催しましたUEL FORUM 2007の講演内容です。
 

 講演者

株式会社ブリヂストン 化工品技術本部長 加藤 信吾 様  
株式会社ブリヂストン 化工品技術本部長
 加藤 信吾 様
 
 

 講演内容

2002年10月に沖縄美ら海水族館で飼育されているバンドウイルカ、個体名フジ(推定年齢38才)の尾びれが感染症及び循環障害を起こし端部からの壊死が進行した。 抗菌薬による治療と切除手術の結果、一命は取り留めたもののイルカ本来の泳ぎが出来なくなり、仲間と離れて浮いているのみの状態となった。
そこで、イルカの皮膚はゴムに似ているという担当獣医の発想から、ブリヂストンに人工尾びれの開発依頼を行った。
 
水族館側で脱着訓練を行うと共に、筆者らは人工尾びれの開発を進めた。 2003年9月に取り付け易さとイルカに大きな負担を掛けない事を主眼に置いた第1号試作品が完成した。 この尾びれをつける事により、イルカの基本的泳ぎ方であるドルフィンキックを行うようになった。
しかし、形状的な不適切さから、十分な推進力はでなかった。
 
その後、材質、形状、構造など種々の改良を加え、 2004年6月には、CFRP補強材を内蔵し、カウリングと呼ぶCFRP製の 取り付け具を使用する効率の良い人工尾びれが完成した。 この尾びれにより、フジはイルカ本来の泳ぎを取り戻し、仲間と一緒に泳げるようになった。
 
ところが、8月になると体力の回復に伴い、他のイルカの訓練に自ら入り込み、ジャンプをするようになった。 しかし、2号試作品はジャンプをすることまで想定していなかった為、大きなジャンプで内部の補強材と取り付け具(カウリング)の破壊が発生した。
そこで、FEMによる応力解析、東京大学曳航水槽による楊抗力の測定、内部補強材、カウリングの材質、構造、製法の見直しを行い、 2004年12月に大きなジャンプをしても破壊しない改良品が完成した。
 
人工尾びれを装着することにより、他のイルカと同等の泳ぎを取り戻すことが出来、 現在では多くのイルカと共にショウに出て大きなジャンプを行うなど、尾びれを失う前と同様な行動が可能となった。
また、手術後の回復に伴い、肥満、コレステロールの増加など成人病の症状が見られたが、 人工尾びれを取り付けることにより、すっかり回復し健常イルカに比べても勝るとも劣らない健康体になった。
 
その後、人工尾びれの改善をさらに進め、ユニシスのCAD/CAM技術も使い、材質・形状を一新し、2007年からは長時間の装着にもチャレンジしている。
 

イルカ人工尾びれプロジェクト
 

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