お客様事例
お客様事例
2008年6月24日公開
インターンシップで若者を呼ぶ。
学生も社員も育てるカリキュラムの構築と、出来高査定でモチベーションもアップ。
「会社発展のための人材育成」と題し、株式会社ナガラ様の事例をご紹介いたします。
本稿は2007年に開催しました、UEL FORUM 2007 in NAGOYAでのご講演内容です。
株式会社ナガラ 代表取締役社長
早瀬 實 様
【創業のきっかけ】
私は18歳からプレス会社へ就職し、朝から晩まで2〜3トンくらいのプレス加工をして、ものづくりをしておりました。
40歳のときには会社のほとんどを任されていましたが、その会社が倒産してしまいました。
失業し何かやらなければいけないのですが、自分としてはプレスしか覚えがありませんので、
小さなプレス金型屋をやろうかなと考えていたところ、前の会社の社員が我が家にやってきて「会社をやってくれないか」と話を持ちかけられました。
もともと会社を興すつもりはなかったのですが、みなに依頼され会社を創業することにしました。
創業と同時に13人の従業員を抱え、当然お客様も仕事も無いので、とにかく営業することから始めました。
従業員は私とほぼ同年代ばかりだったため、私は若い人も当社に入れていかなければならないなと思い、時間をみては学校をまわっていました。
【インターンシップ受け入れの背景】
ところが創業したて、吹けば飛ぶような小さい会社でございますから、学校へ行っても話を聞いていただけません。
ですから、生徒さんに、夏休みの宿題は当社に来て何か実体験をしたらどうか、何か作りたいものがあったら手伝ってあげよう、
と提案をしたり、それから生徒さんに向かって話をしたりして、苦肉の策でインターシップをはじめました。
当時はオートバイが流行していましたから、オートバイのフェンダーを作りに来た学生が多くいました。
インターンシップを始めて、学生が頻繁に当社に来るようになりました。
逆に言えば、仕事の邪魔にもなります。会社へ来ても勉強どころかワイワイガヤガヤと騒いで帰るだけのときもあります。
せっかく来ていただくならしっかりと教え、最終的には当社に就職していただきたい、これが私の最大の望みですので、
試行錯誤し、来た学生に最低限習得していただきたい内容を挙げてカリキュラムを作りました。
【インターンシップのカリキュラム】
当然学生さんに工場に入って危険な作業をさせたり、怪我をさせたりできませんので、 まずは、なるべく災害を近づけないためにも図面の見方を教えました。
その後ワイヤカットを教えて、始めのうちは自分の好きなものを作らせていました。例えばベルトの金具、自分の名前のイニシアルなどです。
午前 | 午後 | |
1日目 | 会社説明、金型について | 設計の基礎、三角法の見方 |
---|---|---|
2日目 | 設計の基礎、三角法の見方 | 設計の基礎、三角法の見方 |
3日目 | 図面の見方 | 図面の見方 |
4日目 | 図面の見方 | 図面の見方 |
5日目 | 部品図の書き方 | 部品図の書き方 |
6日目 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 |
7日目 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 |
8日目 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 | ワイヤーカット 加工プログラム製作 |
9日目 | 金型 手仕上げ実習 | 金型 手仕上げ実習 |
10日目 | 金型 手仕上げ実習 | 金型 手仕上げ実習 |
このようなカリキュラムでインターンシップをおこなうと、ずいぶん学生さんに人気になりました。
学生さんをいかに早く育てるかが問題なのですが、指導者も見よう見真似で指導していては限度があります。
インターンシップのカリキュラムと同様に、どのように指導していくかもしっかりと文章化しました。
図面を理解できるか、指導を受けなくても図面がかけるか、最終的には他の人に指導できるか、
というようなステップを作って自分の技量が目で見えるようにしてきました。
【金型製作スキル管理】
社員のスキルを管理するための表も作成し始めました。管理表は大体3ヶ月ごと、1年に4回更新します。
各レベルがマスターできれば、次のステップに上がっていきます。
表1は初心者を対象としたスキル管理表ですが、役員クラス、部課長クラスにも部長の心得、利益計画、 会社の運営といった内容でスキル管理表を作り、
しっかりとマスターするよう指導するようにしました。
おかげさまで、当社は20歳代がほとんどの業務をおこなっていますが、
2年か3年弱でちょっとした会社の工場を担えるようなスキルを持つまでにステップアップしています。
3ヶ月でなるべく上に上がっていただけるような指導をしないといけませんから、どこまで進んだかわかるように、見える化することが一番重要です。
【出来高査定の仕組みづくり】
指導をしていくと成果があがってきます。
成果があがったらその人にそれなりの恩典をあたえなければいけないと考え、 チップを渡す制度を作っています 。
まずは売上げを、1ヶ月あたり1億7千万達成したかどうかを評価します。
これは全体責任です。
達成したら全社員に1000円あげます。
これは、位は関係ありません。
ただし役員には出しません。
役員以外、部長でも課長でも下のほうの方々でも金額差はありません。
未達成の月も結構あります。
未達成の月にはあげません。
限界利益は会社の中にしっかりとお金が残る利益です。
いくら売上げがあっても外部支払いが多くなれば意味がありませんので、限界利益を達成したら2000円あげることにしています。
これも全体責任です。
当社は金型をつくっている会社です。
金型は、高かったり安かったり金額が流動的です。最近は特に厳しく非常に安価になっています。
とは言うものの、高い、安いという金型の値段で作業量を決めるわけではありませんから、数を重要視します。
金型を1日最低1型、1ヶ月30型を目標とし、売上高や限界利益が未達成であっても、1ヶ月30型作れば2000円あげます。
これも全体責任です。
他に個人や部門評価もあります。
金型を作るにもたくさんの工程があります。まずは営業の方が仕事を請けてきます。
営業部門では、利益幅のいい仕事を請ければ○です。利益幅の悪い、または当社にとっておもしろくない仕事を請ければ×です。
当然設計もあります。
CADCAM、それから機械へと工程を経ていくときに、前工程の不良を次工程にもってこられると困るわけです。
お客様から「よくできましたよ」と言われれば○、「こんなのだめ」と言われれば×をつけていきます。
○は一日に2個ずつつけます。
1個は相手評価、1個は自分評価です。
○の数だけその人に50円換算でチップをあげます。
給料とは別にこのチップをだしております。
ただ、毎日お金を出しているわけではなく、ちょうど給料日と給料日の中間に現金化して社員に渡しています。
社員はたばこ代、ジュース代、一万円でもあればちょっと食事へもいけるものですから、大変評価はよろしく、なんとか目標を達成しようと邁奮しています。