お客様事例
お客様事例
2008年7月28日公開
QCDに対応するために、まず雛形と部品の登録。
さらに、必要な情報や要件を部品に登録して設計者をサポート。
「3Dフルソリッド金型設計への挑戦」と題し、株式会社モールデック様の事例をご紹介いたします。
本稿は2007年に開催しました、UEL FORUM 2007 in NAGOYAでのご講演内容です。
株式会社モールデック (UEL FORUM 2007 in NAGOYA)
専務取締役 伊藤 正人 様
金型開発グループリーダー 石田 吉樹 様
【3Dフルソリッド設計移行への背景】
現在金型業界は、高品質(Quality)、低コスト(Cost)、短納期(Delivery)が求められています。
弊社は、日本ユニシス・エクセリューションズのCADmeisterを導入し、フルソリッド設計へ移行することでQCDに対応していきたいと考えています。
Q:金型設計では、大きな設計間違いよりも凡ミスと呼ばれるものが大半を占めています。
この凡ミスを防ぐ為に登録部品を利用し、高品質な金型製作を目指します。
C:図面レス・編集設計による設計工数の削減、さらに3Dデータの利用による加工工数も削減され低コストが可能となります。
D:パラメトリック機能を利用することで編集設計に対応でき、短納期に繋がります。
【3D設計移行の阻害要因と改善指針】
3D設計への移行にあたり、阻害要因はたくさんありますが、主な要因は3つです。
一つ目は、現状3Dデータだけでは後工程への情報伝達ができないということです。
現在は2D図面から加工データを作成しており、3Dデータだけでは加工データを作成できません。
今後は必要最低限の加工情報の提示、加工属性の設定や簡易図面で対応をしていきます。
CADmeisterのCAMでは、一括で加工属性一覧表の出力をすることができます。
一覧表には全ての穴位置、穴深さ、穴の径、加工内容が含まれおり、このような加工情報を利用し加工データの作成をしていきます。
二つ目は、製品データの準備に時間が掛かることです。
フルソリッド設計を進めていくには精度の高い結合面が必要になります。
今後は、上流工程の段階からソリッドでデータを作成するように推進し、精度を向上させていきます。
三つ目は、データ量の増加です。
すべて3Dで形状を作成し、部品属性や加工属性を付加していくと当然データ量が増えます。
しかし、ハードウエアの進化により今後はメモリの3GB対応や64bitOSで対応していけるかと思います。
【事前準備】
3Dフルソリッド設計を始めるための事前準備もたくさんありますが、3つに絞ってご紹介します。
まず設計方法の選定です。
設計方法をハイブリット型・フルソリッド型の2種類に分けました。
ハイブリット型とはサーフェスを基準として登録部品を配置し、設計をおこなっていく方法です。
主にデータ量の多い製品や製品データの精度が悪いものに対応できると考えています。フルソリッド型は、全てソリッドで作成します。
両方の設計方法を利用し臨機応変に対応しますが、
今後は部品属性や加工属性を利用するため、フルソリッド型を進めていきたいと考えています。
続いて雛形の登録です。
一般的にはモールドベースに部品を一つずつ配置して型設計を進めていきますが、
当社の場合は、雛形に、使われるであろう部品をあらかじめ全て配置しておき、 設計の段階で必要ない部品を取り外して仕上げていく方法をとっています。
したがって、雛形の登録が重要になってきます。
最後に部品登録です。
そもそも「ソリッド設計=部品配置設計」となります。
したがって、部品の登録が最も重要になります。
部品登録の際におこなった作業は、まず構成部品の調査です。
当社十数年にわたる設計業務で作成した多数の2次元図面から、どのような部品を使って設計していたか洗い出し、
その部品が本当に必要かそうでないかを判断して必要な部品のみの一覧表を作成しました。
また、部品に優先度を付け、部品のランク決めもおこないました。
【部品登録】
部品登録が最も重要ということで、今回当社が登録した部品について少しご紹介いたします。
例えば、40mm幅のスライドコアのユニットを80mmに変更した際には、本体に見合ったアンギュラピンのサイズに自動変更されるよう登録されています。
ストロークなどの動作変更を行った際は、アンギュラピンの長さはもちろん、逃し穴も自動で変更されるので、
変更忘れや干渉防止を防ぎます。
さらに、当社のベストな設計と思われる設計要件を入力しておき、アンギュラピンの角度や傾斜の角度がMAX値を越えた場合、
部品側でMAX値に修正されるようにしています。
このように設計者をサポートできるように部品を登録しております。
また、登録してある全ての部品には部品情報が入っています。
メーカー名・品名・品番・材質等の情報です。
部品のサイズを変更すると自動的に部品の品名・品番が修正され、発注間違いや入力ミスなどのヒューマンエラーを防ぎます。
以上のように登録部品に必要な情報や要件を入れ込み、設計者をサポートするように部品登録をしてきました。
このような部品を利用して3D設計することで、より良いソリッド設計ができます。
【今後の展望】
まず、CADmeister CAMの加工属性機能を利用して、設計から加工データ作成までの連携を深くしていきたいと考えています。
また、当社は金型設計専門の会社ですので、お客様となる金型メーカー様にもソリッドデータで対応する環境を整えていただく必要があります。
そのために、金型メーカー様向けの勉強会を実施するソリッド支援センターを2005年に立ち上げました。
今後もこの勉強会を進めていき、ソリッドの環境を整えていただきたいと思います。
そしてフルソリッド金型設計支援ソフトウエアの開発です。
当社のソリッド設計をより良いものにしていこうという目的で自社開発したソフトウエアがいくつかあります。
まずは部品表作成ソフトウエアについてご紹介させていただきます。
全ての部品には、部品属性を持たせており、その部品属性をCADCEUS・CADmeister側から一括で出力し、そのデータを簡単に取り込むことができます。
取り込んだデータはお客様のテンプレートに合った発注書・見積書・部品表などに展開できます。
次に材料取り/モールドベース加工図作成ソフトウェアです。
こちらはソリッド設計を進める上で図面作成をできる限り無くしていきたい (ペーパーレス)という目的で現在開発中です。
特にモールドベース加工図はSOLID設計を進める中で、モールドベース発注用に 図面化をする手間をなくし、設計工数の低減を目指しています。
現在は材料の大きさ等、各部の寸法を手入力して作成しなければなりませんが
今後はCADCEUS・CADmeisterからの属性情報を得て、自動的に材料取り図/モールドベース加工図を作成できるようなシステムにしていきたいと考えています。
最後に設計計算ソフトウエアです。
現在ポケットコンピュータによる金型の設計計算支援ソフトウエアのWindows版を開発中です。
このソフトウエアは、金型設計を行う上で必要になる金型のたわみ計算・圧力計算・強度計算等について、簡単な数値入力だけで結果を求めることができます。
今後もより良いソリッド設計の環境を整える上でソフトウエアの開発、さらには金型メーカー様への勉強会やコンサルタント等を進めて行きたいと思っております。
株式会社モールデック様の「3Dフルソリッド金型設計への挑戦」は、これで終了です。